From:中村洋介
先日、わたしがお邪魔した上場企業で聞いた話。
この企業では、上場以降も順調に業績を伸ばしており、本業から派生する新規事業も順調で、次なる企業成長の機会を目指されています。
ふとSDGsの話題になったとき、面談していた方が、「そういえば社長が最近、PLメインの短期思考ではダメだと言っていました。」と教えてくれました。
以前行きすぎた資本主義経済の危機について触れましたが、この会社でも同様に、今のままの思考態度ではいけないと感じているというのです。社長は最近、ファイナンスについて色々学ばれているのだとか。
なぜ社長はPL中心の短期思考がダメで、そこにはファイナンスの視点が必要だと思ったのでしょうか?
ファイナンスとは?
この会社の社長が言われるのはファイナンス思考のことだろうと思います。
ファイナンス思考とは、
「会社の企業価値を最大化するために長期的な目標に立って事業や財務に関する戦略を総合的に組み立てる考え方」(出典 ファイナンス思考 朝倉祐介著)のことです。つまり、将来に渡って企業の価値を上げ続ける経営ということです。ではPLメインの思考態度だとなぜ将来の企業価値が最大化しないと、この社長は考えたのでしょうか?
PL中心の思考態度
日本企業の多くでは、PL、つまり損益計算書ベースの経営管理が行われています。誰にでも解りやすく、事業部や会社全体の一定期間の経営成績を見ることができるというメリットがあるからです。
例えば、下記のような企業があるとします。
(A企業)
売上 1000万
売上総利益 300万
販管費 500万
営業損益 200万
会社の損益については分かりやすいですですが、この損益計算書だけを見て経営を行うと、まずい問題点はなんなのでしょうか?
一言で言えば、「利益は出たけど、会社のキャッシュフローが増えたかどうかは分からない」ということです。
営業利益がプラスで会計上の利益は増えても、その利益を捻出するために、銀行から借入を行なっていれば、保有するキャッシュフローが必ずしも増えるとは限りません。
例えば大きな設備を購入していれば、その返済のために、出た利益の中から借金(例えば銀行借入)を返さなくてはいけません。(厳密に言うと少し違うのですが、ここでは詳しい説明は割愛します。)
上記のA企業のように、200万の営業利益を出すために、会社が1億円の設備投資を行い、その借入の返済が毎月200万あれば、手元のキャッシュは全く増えていないということになります。
利益は出ているけど、キャッシュは増えていない。つまり、稼いだ利益=借入返済額ということになります。つまり企業価値は向上していません。
企業は本質的にゴーイングコンサーン(会社が将来に渡って事業を継続していくという前提)ですので、PL中心の思考態度だけではいけないわけです。
ファイナンス思考という視点を持つ
SDGsは、企業は本質的にゴーイングコンサーンであることを前提に置くと、この未来志向とも言えるファイナンス思考を全社員に判りやすく理解し納得させる効果があります。
2030年という長期に渡って達成を目指している具体的目標ですから、企業が導入すると、「長期志向」「未来志向」「価値志向」に目が向きやすくなります。実際、私がSDGsの導入のご支援をしている企業では、ファイナンス思考の重要性に気づき、経営活動が活発になるとともに、価値志向に大きくシフトするケースがあります。
200万の営業利益を出しても、設備投資に対して返済が200万であれば、企業価値は向上していないというのがファイナンスの視点です。SDGsを導入している企業では、長期的に見て自社の経営に果たして持続可能性はあるのか?という気づきを与えてくれます。
そしてまた、「SDGsを掲げているのに、会社の持続可能性が向上していない。これって問題なのでは?」という気づきも同時に得ることができます。
つまり、SDGsは企業のファイナンス思考を全社員が一丸となって推し進める理解促進の役割を果たすとも言えます。
PS
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