「ヘアドネーション」って本当にいいこと?

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From:SDGsジャーナル 河上伸之輔

 

日本でヘアドネーションの取り組みを先駆的に行ってきたJapan Hair Donation & Charity(通称 JHD&C /ジャーダック)の渡辺貴一代表にSDGsライブにお越しいただきました。
ライブ終盤、今後の展望についてお伺いした際に渡辺さんがおっしゃったことが、タイトルにある「ヘアドネーションって本当にいいこと?」というお話です。
大変考えさせられる話でありました。

ライブ配信のアーカイブはこちら

 

●ジャーダックの設立

渡辺さんは、美容師をされていてニューヨークで修行する経験があったそうです。その際に、アメリカのチャリティーの文化に触れられました。寄付する人が自然に行っているということが印象的だったそうです。ご自身が美容師として独立される際に、美容師ならではの取り組みができないかということで始められたのが、ジャーダックで行っているヘアドネーションでした。
2009年当時は、ヘアドネーションという言葉はほとんど普及しておりませんでした。しかし、今ではヘアドネーションという言葉は当たり前に聞かれるようになり、年間10万人以上の方がヘアドネーションの活動に参加されるようになっています。

ジャーダックは18歳以下の子どもたちに無償で医療用ウィッグを提供しています。医療用ウィッグを必要とする子どもは脱毛症や無毛症の子どもたちが7割程度、残りが抗がん剤などの副作用によるものだそうです。大人用のウィッグは種類も豊富で、高級なものから手頃なものまであります。
しかし、子ども用のウィッグに関しては市場規模が小さいためか、種類も少なく手頃な価格のものはなかったそうです。そこで、子どもたちに対して医療用ウィッグの配布を目的としてジャーダックが設立されました。

ウィッグの材料となる髪の毛は皆さんの寄付で集められています。今では多くの美容室でヘアドネーションの理解が進んでいますので、通っている美容室で相談していただくのがいいと思います。ジャーダックさんのウェブサイトには賛同サロンの情報も記載されていますが、記載されていない美容室でも受け付けてくれるところはたくさんあります。

すっぽりと頭にかぶるタイプのウィッグを作るためには、50名程度のヘアドネーションが必要だとのことです。1人の寄付で1つができるとまでは思っていませんでしたが、数人分の髪の毛があればできるのではと思っていた私としては、驚く数字でした。ジャーダックさんでは最低31cmの髪の毛をウィッグにしていますが、長くなった髪の毛を切ったとしても長いものもあれば短いものもあります。細すぎたり、くせがあるために使えないものもあります。そういったものを選別していく必要があります。

そして、その選別は手作業で行われ、さらにはウィッグの加工も手作業で行われています。頭をすっぽりと覆うメッシュの生地に1本1本植えられていきます。この途方もない作業はウィッグで有名なアデランスさんが無償で協力されているそうです。

 

●書籍「31cm〜ヘアドネーションの今を伝え、未来につなぐ〜」の出版

ジャーダックの活動の10周年を記念して書籍を作ろうという計画がスタートしました。実際に発売されたのは昨年でジャーダック設立から12年目でした。

出版はクラシップという出版社で、代表の田口京子さんが直接編集も携わっていらっしゃいます。もともとは花王にお勤めで、ヘアケア商品などを扱っていたため、田口さんはジャーダックの渡辺さんと親交があったそうです。

この書籍の特徴は、ヘアドネーションにさまざまな形で関わる人たちのインタビューがまとめられています。髪の毛を贈るドナーのことは取り上げられることがこれまでも多かったのですが、レシピエント(髪の毛を贈られる子ども)、レシピエントのお母さん、美容師、医療従事者の方、などの声がまとめられています。

著名なイラストレーターの方々にも賛同いただき、眺めるだけでも楽しいデザインとなっています。

赤沼夏希、an、一乗ひかる、牛木匡憲、UNPIS、オートモアイ、北林みなみ、志村洸賀、しらこ、せきやゆりえ、NAKAKI PANTZ 、中島ミドリ、 中山信一、 マトバユウコ、mollydomon (50音順)

 

●「ヘアドネーション」って本当にいいこと?

ライブ配信で、渡辺さんがおっしゃった『「ヘアドネーション」って本当にいいこと?』というお話について、私の考えも含めてまとめていきます。
ジャーダックさんでは、これまで多くの方にご協力いただいて、医療用ウィッグを必要とする子どもたちに無償提供することができました。その点については、大変感謝をしていることが伝わってきました。一方で、ウィッグをつけるということは、少数派である髪の毛に悩みを抱える子どもたちに、多数派と同じようにしなさいと押し付けてしまっているのではないかという思いもあるとのことでした。

なぜ医療用ウィッグが必要になってくるかというと、これは私たちの偏見や差別が根底にはあるからだとも考えられます。髪の毛がないことは普通ではないことだと、どこかで思ってしまっている。このような偏見がなくなると、ウィッグをつけることもつけないことも自由に選択できる社会になります。これは、髪の毛に悩みを抱える人以外にも、あらゆる人にとっていきやすい社会であるとも言えます。

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2022年3月28日 SDGsジャーナルライブ配信
「ヘアドネーションで伝えたいこと」

 

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