SDGsを加速させるには企業が「ICT」を活用することが重要であり、目標5ジェンダー平等の実現には「ICT」が必要。
そして、その為に重要なポイントは、
- 「ソーシャルメディア」
- 「雇用機会の創出」
- 「オンラインマーケティングを取り入れた在宅起業支援」
の3つであることが世界の成功事例によって明らかになってきました。
→ICTとは?
IT(情報技術)が技術そのものをさすことが主に対し、 ICT(情報通信技術)は通信技術そのものではなく、通信技術を用いたコミュニケーションのこと。ITという言葉の方が日本では馴染みがありますが、国際的にはICTが普及しており、日本政府も「ICT」の推進を始めています。例えば、ソーシャルメディア、オンラインでの顧客対応、iPadを使った社員教育等もICTの一つです。
世界の成功事例が金沢に集結!JCI金沢会議
JCI(国際青年会議所)の各国代表がSDGsの実現に向けて集結した「2019金沢会議SDGsCONFERENCE」が、2月23日(土)金沢市文化ホールで開催されました。
→金沢会議とは?
SDGsが採択された2015年。JCI世界会議金沢大会において、「持続可能な発展」をJCIで推進することを宣言したのが金沢会議。以降、毎年1回金沢で開催され、今回で4年目。SDGs実現の為に議論と各国の最新情報の共有を続けています。(2019年は2月22〜24日の3日間に渡り開催)JCI金沢会議2019特設サイト
集まった代表達は、アレイ・オベンソン JCI 事務総長を進行役として、SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」の達成に向けた議論を展開。各国で実践済みの、事例が共有されました。
様々な事例が共有される中、注目を集めた成功事例が「ICT」の活用によるもの。
各国の男女格差を測る「ジェンダーギャップ指数ランキング」149カ国中、日本は110位とG7でも最下位の「ジェンダー平等」後進国。
しかし、そんな「ジェンダー平等」後進国である日本において、今回共有された成功事例は、すぐにでも取り組みだせるものばかりでした。
それでは、成功事例によってわかった「企業がSDGsを加速させる為のICT活用3つのポイント」をお届けいたします。
ICT活用ポイント① ソーシャルメディア
台湾のJCI副会頭ケリー氏、インドネシアのJC理事長チチ氏の両氏から話された成功事例のポイントは「ソーシャルメディア」。
台湾では、LGBT(性的少数派)について話す沢山のソーシャルメディアによって、「ジェンダー平等」の理解が進展。
また、インドネシアでは女性が活躍している姿をソーシャルメディアで発信することで、女性の社会進出とリーダーシップ推進に成功していることが話されました。
日本国内でも「インスタ映え」という言葉と共に女性を中心にインスタグラムが拡大したように、女性のソーシャルメディア利用率は男性よりも比較的高い傾向にあります。※下表最右列参照
日本企業はまだまだ男性が引っ張っているイメージが強い傾向にあるかも知れません。
しかし、そういったイメージの強い企業こそ「実は女性だって活躍している姿」を、積極的にソーシャルメディアで発信してみてはどうでしょうか?
事実、ソーシャルメディアを活用して、ジェンダー平等の推進に成功している企業が日本にもあります。
例えば2017年に石川県金沢市よりの「女性活躍促進モデル企業」として認定された(株)加賀建設さん。
男性イメージの強い土木建設業ですが、Facebookでも女性の活躍している姿が配信されています。
決して配信の数が多かったり、あえて女性を前面に出されているわけではありません。しかし、
女性職員の数は2013年〜2018年で5倍に増加。
女性の就業率が14%台平均の建設業において、なんと全従業員の34%が女性で構成されています。(参照:厚生労働省男女別就業者数、雇用者数の推移参考資料)
就職先を探している学生が、応募を検討している企業のHPやソーシャールメディアをチェックするのが一般的な現代。
ジェンダー格差のない企業文化のそのままを発信する事によって、女性就業者の増加による目標5の実現に繋がっていくようです。
女性の活躍出来る仕事が増える事で、新たなリーダーシップ発揮機会の増加。働きがいの向上によって目標8「働きがいも経済成長も」にも繋がっていきます。
うちの業種はソーシャルメディアなんて関係ない。と思う企業こそ、意外性によって社会から注目を集め、SDGs目標5の加速に繋がるチャンスかも知れません。
ICT活用ポイント② 雇用機会の創出
セルビア代表のミラーナ氏からは、職業訓練による女性の雇用機会の創出に成功した事例が話されました。
セルビアの女性首相アナ・ブルナビッチ氏はLGBT団体にも所属していて、女性の社会的地位の向上にとても柔軟性のある考え方を持っているとのこと。
そんなセルビアで2018年に実施されたのが、無職の女性150人に対するICT職業訓練。
そして、そのゴールは彼女たちをICTスペシャリストに育成し、就職できるようにするというもの。
6ヶ月の訓練後、多くの参加者が就職に成功したそうです。
この成功事例は女性への施策によるものですが、男性に置き換えてみても同じく雇用機会の創出ができると言えます。
実は今回このセルビアでの成功事例によって大きな発見がありました。
それは、日本の企業で既に行われていることが、SDGsと結びついている。ということ。
そして、今すぐ参考にできる「ICTによる、ジェンダー格差のない雇用創出/成功事例集」と言えるものが既に日本にはあること。
このことを、JCIセルビア代表のミラーナ氏が気づかせてくれました。
その発見とは……
厚生労働省作成「テレワーク事例集」
テレワークとは?
あらかじめ定められた勤務場所(一般的にはオフィス)で、例えば9時から17 時まで定められた時間を勤務するという、固定された「勤務場所」と「勤務時間」に基づくこれまでの働き方に対して、テレワークはICT (情報通信技術)を活用することによって、働く場所と時間を働く人が柔軟に選べるようにした働き方です。
(引用:厚生労働省委託事業 テレワーク相談センター[テレワーク相談センター|テレワーク(在宅勤務やモバイルワーク)の定義について](https://www.tw-sodan.jp/about/index.html)より)
この厚生労働省作成の「テレワーク事例集」は、「テレワーク活用の好事例集」「輝くテレワーク賞事例集」の正式名称で、平成26年から毎年発行されています。
合計事例は50件。(本記事執筆現在)
ICT活用によってジェンダー格差を解決し、雇用する側、される側双方のメリットを生み出している事例が多数掲載されています。
こちらは事例の一部です。
ジェンダー格差の解決事例
- 育児期間中にも在宅で仕事ができ、男女関わらず仕事と育児の両立が可能に。
- 結婚、出産、育児、介護等によって、女性は退職するケースが多かったが継続就業(雇用継続)が可能に。
- 夫(配偶者)が転勤になっても、仕事を辞める必要がなく継続就業(雇用継続)が可能に。
その他(企業の経営メリットにも繋がる例)
- オフィスの電気代、交通費のコスト削減)(目標7)
- オフィスの小規模化による固定費削減
また、通勤時間がなくなり、家族との時間が取れるようになること。個人のライフスタイルで生きられるようになることから、精神的な安定が得られ働き続けられるようになる。等の導入メリットも事例では報告されています。
今回取り上げた事例だけでも、ICTの活用は目標5だけでなく、
目標3「健康と福祉をすべての人に」
目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」
目標8「 働きがいも経済成長も」
といった複数の目標達成に密接に関わっています。
様々な場で「目標5の達成無くして、SDGsの達成なし」と言われる由縁が見えてきました。
その他、事例集では「テレワーク」に取組む前の企業によくある不安
- 具体的な仕事内容は?
- 勤務管理は難しくないか?
- 就業規則の変更は必要か?
- 人事評価はどうすればいいのか?
- 導入するときの注意点は?
- 機器や通信費の負担は?
- 導入コストは?
- 労災保険は適用されるのか?
等々も詳しく解説してくれているので、ICTを活用したSDGs加速の為に是非ご覧下さい。
→事例集公開サイトはこちら
政府SDGs推進本部作成の「SDGsアクションプラン2019」p5でも、テレワークについて書かれています。是非合わせご覧ください。
ICT活用③ オンラインマーケティングを取り入れた在宅起業支援
「ソーシャルメディアの活用」による成功事例を話してくれたJCIインドネシアのチチ氏。
そのチチ氏が世界に共有してくれたもう一つの成功事例がこちら。
「オンラインマーケティングを取り入れた在宅起業支援」です。
この支援は2018年にインドネシアで事業として行われたもの。
対象は女性。特に母親。
参加女性に対して、オンラインマーケティングのトレーニングやワークショップを実施。
在宅でも起業、運営ができるビジネスの仕方を教えたそうです。
その結果、彼女たちは様々なビジネスでの起業に成功。
従業員を雇える程に成長しているとのこと。
自宅で子どもの面倒を見れようになり、仕事も出来るようになったこの事例は、まさにターゲット5.5、5.bの実現と言えます。
5.5 | 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。 |
5.b | 女性の能力強化促進のため、ICT をはじめとする実現技術の活用を強化する。 |
このオンラインマーケティングを取り入れた成功事例は、日本のジェンダー不平等の解決にも繋がります。
子ども3人の母でありながら、半田青年会議所理事長を務め、製造業の3代目社長もこなす曽根氏が共有したジェンダー不平等は、
「子育てをするには収入が必要であるにも関わらず、日本には待機児童の問題があり、子育てをしながら仕事をするためのインフラが整っていない」
という「子育てと仕事の両立」が困難な日本の問題。
しかし、インドネシアの様に日本でも女性自身が、「オンラインマーケティングを取り入れて在宅でもできるビジネスで起業」し、在宅雇用(テレワーク)を生み出していったらどうなるでしょうか?
企業が既存の事業にオンラインマーケティングを取り入れ、在宅雇用を生み出していくことができたらどうなるでしょうか?
定時から定時の仕事に縛られることなく子育てをし、在宅で仕事をしながら収入を得られるビジネスモデル。それが子育てをする女性たちにも可能であることをインドネシアが証明してくれました。
現在日本国内では、企業がオンラインマーケティングを取り入れるための様々なサービスが各社から提供されています。
インドネシアよりも優れた高速通信網に恵まれた日本。
既に、オンラインマーケティングを取り入れる為の最高の環境が整っています。
あなたのビジネスにオンラインマーケティングを取り入れることで、「ジェンダー平等」の実現を一気に加速することが出来るでしょう。
オンラインマーケティングによるSDGs実現フロー概要
- 既存のビジネスに、オンラインマーケティングを取り入れる。
- 時間と場所に縛られない在宅雇用(テレワーク)を実現
- SDGs目標5の実現により、全ての目標を加速。
目標5の実現で、全てが繋がり加速する
「企業がSDGsを加速させる為のICT活用3つのポイント」いかがでしたでしょうか?
例えば、今回ご紹介した「3つのポイント」はポイント③から進める視点で見るとわかりやすいかもしれません。
- ③オンラインマーケティングを取り入れ
- ②テレワークを実現し
- ①それをソーシャルメディアによって届ける
「3つのポイント」が相互に関係し合っていること。目標5の実現によって、その他の目標実現も連動して加速していくことを知って頂けたのではないでしょうか。
全ての目標実現の為に、ICTを活用してSDGsを加速させましょう!
次回、【JCI金沢会議レポート第2弾】は国連女性機関UNWomen日本事務所長 石川雅恵氏の講演をレポート。
「10秒で出来るSDGs!今すぐ取組むべき「He For She」とは?」と題し、
「そもそも、ジェンダー平等って何?」という平等の本質から、「ジェンダー平等をやっていないと企業はどうなってしまうの?」といった企業リスクに関するお話までお届けいたします。
日本JCの今後の取り組み
【サマーコンファレンス2019「World SDGs Summit」】
2019年「日本で1番のSDGs推進団体」になることを宣言した日本JCが、7月20(土)21(日)に開催するサミットの詳細はこちら
【サマーコンファレンス2019「World SDGs Summit」】
2019年度のサマーコンファレンスは、「World SDGs Summit」をテーマとして、7月20日(土)と21日(日)にパシフィコ横浜にて開催致します。
社会・経済・人材・組織に関する国内のSDGsの取組み事例のみならず、世界の先進事例をフォーラム・セミナー・サミットを通じてご紹介するとともに、VRなど最先端技術を活用して「家族」や「学生」も楽しめるウォークスルー型の体感アトラクションで地球の課題を疑似体験できるブース出展も企画予定です。
まずは始めてみることは大切です。
2019年度のサマーコンファレンスにご参加いただくことで、地球(社会)の課題と向き合い、身近に始められるSDGsを見つけてすぐに行動できる仕掛けを用意し、皆様のご来場を心からお待ちしております。
公益社団法人日本青年会議所
2019年度 経済グループ
サマーコンファレンス運営特別委員会
特別委員長 和田 壮司
takeshi.wada@audinet.co.jp
090-8870-4072