2019年1月19日「日本で一番のSDGs推進団体」になることを宣言した、日本青年会議所(以下、日本JC)。
今回お届けするのは、京都会議「SDGs推進フォーラム」の模様です。
このフォーラムは日本JCが「SDGs推進宣言」を行なった同日、同じ会場で開催されました。
※「京都会議」とは?や、日本JCが行なった宣言詳細については、こちらの特集記事でご覧頂けます。
SDGs推進フォーラムとは?
「本年、日本JCではSDGsを大きく推進していきます。 そして、多くの事業、取り組みを行なっていく中で、この「SDGs推進フォーラム」のテーマを持続不能から持続可能へと題して開催致します。 」
会場を埋め尽くす約2000名の来場者に向けて、女性司会者の緊張感が伝わるアナウンスによってフォーラムはスタート。
このSDGs推進フォーラムは「京都会議」のメインフォーラムとして片山さつき内閣府地方創生担当/女性活躍大臣を招き、
- 第一部|基調講演|片山さつき大臣
- 第二部|日本JC副会頭とのパネルディスカション
- 第三部|一般社団法人丹羽青年会議所(以下丹羽JC)のSDGs取組み事例紹介
という三部構成で開催されました。
それでは、持続不能から持続可能へ向かうために、三部構成を通じてどのようなメッセージが会場に伝えられていったのかをお届けします。
第一部 地方創生とSDGs
第一部の内容は、政府が「アクションプラン2019」で示している3つの方向性のうちの一つ。
地方創生に向けた国の方向性について。
「地方創生とSDGsの連携について話ができて嬉しいです。 JCがSDGsに取り組むことが 日本にとって地球にとって重要なことだと知って欲しい。」
と片山大臣は講演をスタート。
まず、「アクションプラン2019」の大前提を話されました。
その大前提とは、2015年9月に国連で採択された時から変わらないSDGsの「全体を貫く5つの特徴」です。
SDGs全体を貫く5つの特徴とは?
- 全ての国が行動できる
- 包摂性(誰も取り残さない)
- 全てのステークホルダーが役割を演じられる参加型・参画型
- 経済、社会、環境に統合的に取り組む
- 透明性を持って定期的にフォローアップする
これがその5つの特徴です。
政府が設定したアクションプラン2019でも、この5つの特徴が全体を貫いていると話す片山大臣。
その上で、日本型のSDGsモデルをもっと広げていきたいと強調していました。
日本型のSDGsとは?
アクションプランの中で、3つの柱と8つの優先分野として示されているもののこと。
アクションプラン2019 政府公表資料
SDGsジャーナルアクションプラン2019解説ページ
つまり、日本型のSDGsモデルの構築は、世界がともに実現するSDGsの一部だったわけです。そして、ここから講演は「地方創生にSDGsが原動力として必要」な理由へと展開していきました。
なぜ、地方創生が必要なのか?
「なぜ地方創生にSDGsが原動力として必要なのか? 」の話を始める前に、「なぜ、地方創生が必要なのか?」に向き合う必要があると話す片山大臣。
SDGsという原動力が必要とされる背景をわかりやすく私たちに教えてくれました。
日本が抱えている問題
「人口の問題がすごいことになっています。日本の総人口は今後100年間で、何の手も打たずにいれば、 明治時代後半ぐらいの水準に戻ってしまう恐ろしい可能性がある。こういった変化は地球上で1000年単位で見ても起きたことがない。 それほどの危機に直面しています。 」
と人口減少がもはや非常事態という話からきりだした「地方創生」の必要性。
「1000年単位で見ても起きたことはない」という言葉。
この言葉から、具体的な数字を知らなくても、とんでもない危機であることが会場中に伝わっていたように思います。
SDGsジャーナルでも人口減少について調べてみたところ、驚くべき数字がわかりました。
- 現在日本の人口は1億2632万人。(平成31年1月1日現在/総務省統計局公表データ)
- 明治時代後半は約4000〜5000人( 国勢調査以前のため総務省資料より推定)
つまり現在の半分以下の人口になってしまうということです。
安倍内閣が一丁目一番地 として、「地方が再生されなければ日本の再生はない。」と断固として言い切った背景はこれです。と熱を帯びる片山大臣の語気からも、ことの深刻さが伝わってきました。
そして、人口減少による問題についてこのように話されました。
社会保障制度の崩壊
これまでは、2.28人の若い世代で1人の高齢者を支えてきた。でもそれはなんとか人間の技術で乗り切ってきただけ。 という片山大臣。
このままでは、1.4人で一人を支えるというあり得ない時代が来てしまうそうです。
そして、他の生物で見ても、そんな支え合いをしている生物はいない。と例にあげ、一人当たりの負担増加によって、社会保障の持続可能性が極めて危機に瀕していることを話されました。
この危機的状況解決のために、来年には公務員の定年を65歳にするという法案を出すそうです。
そして、本人が希望すれば70歳まで雇用が可能なようにしていくとのことでした。
もはや定年後はゆっくり。なんていう夢を描くかつての人生設計は、崩壊してしまうほどの変化が起きているようです。
そして、人口減少が社会に与える影響は社会保障制度問題だけではありませんでした。
それは何か?
人のいない「まち」の増加です。
20年後、人が「まち」からいなくなる
今から20〜30年後、山間地を含めて国土の2割は人が住まない地域になってしまうそうです。
地方創生には、その土地に住み暮らす人たちの原動力が必要にも関わらず、人がいない。
つまり、「地方創生」が不可能になることを意味しています。
このことについて片山大臣は、
こういうことは歴史を背負っている我が国として、 後世にきちんとした国を引き継いだとは言えず、非常に強い危機感を持っています。
と話し、人口減少と地方の創生 において、日本はサバイバル状態にある。というように危機的状況を表現していました。
地方創生にSDGsの原動力が必要な理由
ここまでお届けしてきた人口減少の危機的状況。
この課題を解決するためには、人が安心して暮らせ、子どもを産み育てられる「まちづくり」が必要。
しかし、その為には一時的な補助金や、よそ様頼りでは意味がない。
だからこそ、本当の意味で人口減少の課題を解決しなければならない。
その為にはSDGsによって自立的にまちの中で 人、仕事を好循環させ、経済、社会、環境の3つを統合的に取組む必要がある。という片山大臣。
日本がサバイバルに挑む為に、今SDGsが必要とされていたわけです。
地方創生「これからの課題」
これからの課題について、片山大臣は「地方公共団体の認知が足りない。」と、その課題について話されました。
地方公共団体といえば、国と連携していて、むしろ私たちよりもSDGsのことをよく知っている。
そう思っていたのですが、残念ながら実際はまだそこまでは至っていないそうです。
2年前にはSDGsを知らないところが、5割くらいもあったとのこと。
現在は全く知らない。というところは5%に減ったそうです。しかし、まだ全国の地方公共団体の4分の1がSDGsをしっかりとは認知していないとのこと。
また、認知している地方公共団体においても、半数以上がこれから自分の市や町の施策としてやろうとしている段階とのことでした。
そして、この課題解決のために政府が日本JCに期待していることがありました。
これからのJCに政府が期待していること
「誰もが挑戦できる幸せな国 日本の創造」 という日本JCの理念。そして、「誰も取り残さない持続可能な社会への改善」といった基本方針。
これらは政府と完全に軌を一にしており、JCが行なっているコミュニティーづくり自体がSDGsの基本を貫いている。と話された上で、
- みなさんが地域活性化でやっていることを、どんどんSDGsにつなげていって欲しい。
- そして、地方公共団体がこれからSDGsに取組むためにも、地域の力との連携、まさにJCの皆さんの原動力が必要。
- 「地方創生とSDGs」これを JCのみなさんと政府で車の両輪として進めてまいりますので、 どうぞお力を貸してください 。
といった旨を、これからのJCに期待することとして話し、第一部を締めくくっていました。
第二部 SDGsパネルディスカッション
この第二部は、日本JCの副会頭4名から、「社会」「経済」「人材」「会員拡大」といったテーマについて、片山さつき大臣に意見を求めるスタイルで行われました。
「国家として社会保障制度というものを どう進めていくのか? そして、 この問題が、SDGsと紐づくことによって どのような議論の姿があるのか? 」という問いに対して片山大臣は、
「30代の人たちが人生100年時代になってきているため、健康で生き生きした生活を100年送るにはどうしたらいいか? という意識を持って欲しい。」
そう話した上で、地域ごとによる状況の違いについて言及。
今年か来年には改革の方針を政府として出していく時期なため、
- 高齢者の人数
- 出生率
- 経済状況
これらの地域特性の上で、まずは地域でできることを考えていただき、社会保障の「こうあるべき」にもっともっと発言してほしい。と返し、地域と共に議論を進めていく姿勢を示していました。
全国47都道府県に694の会議所を持つ青年会議所。
彼らが地域の状況を洗い出すことで、地域が本当に求める社会保障制度の実現に大きな変化を生めるかも知れません。
この他、SDGsという切り口で会員拡大するのは初めてというJCからの、「SDGsに取り組むことでのブランド力の向上をどのように考えておられますか? 」という問いに対して片山大臣は、
「SDGsは普遍的で各目標を眺めると、誰もがそうだよね。と共感できるものばかりで、これほど共感ができるものはこれまでない。」
とした上で、
「JCに入ることに対して、政策目標のレベルの高さなどから、敷居が高いと感じている人もいるかもしれない。 でも、SDGsを用いることで、例えば、日頃ボランティアや、少しでも環境がよくなるもの、 リサイクルにつながるものは全部SDGsなんだよ。 というようにもっと短じかに伝えることができる。」
と言う旨を話されました。
SDGsというこれまでなかった共感による人材獲得のお話は、企業が優秀な人材を獲得することにも繋がっていると言えるのではないでしょうか。
第三部 SDGs取組み事例紹介
第三部では、今年1月に取材させて頂いた丹羽JCの酒井理事長が登壇。
全国のJC会員に向けた取組み事例紹介の為に登壇されていました。
※取組み事例詳細は、1月に取材させて頂いたこちらの記事でご覧頂けます。
→映像版はこちら
進行役を務めた加藤副会頭からの、「SDGsのゴールを事業に設定することは効果があったと言えるでしょうか? 」という問いに対して酒井理事長は、
いつも町のために頑張って活動してる中で、 結局何に結びついてるのかとか、 これ一体何になるの?ということがあったが、SDGsのゴールを事業に設定することで事業の効果や目的が目に見えて分かるようになった。
と話され、これから取組む青年会議所に対しては、「難しく考えずにやってみる。 とにかくやってみる。 やりましょう! それを持続していきましょう!」というメッセージを会場に発信されていました。
この丹羽青年会議所の取組事例も、中小企業の事業にそのまま当てはまると言えます。
いいことをやっているのに、わかってもらえない。
いい商品をつくっているのに、売れていない。
こういった悩みを抱えている企業はとても多いように思います。
「SDGsウォッシング」と呼ばれる、自社利益の為にSDGsをやっているように見せかけて悪用することは決してあってはなりませんが、自社の事業とSDGsをしっかりと紐付けて社会に取組みを発信することで、
- 自社にとって、
- 買い手にとって、
- 社会にとって、
持続可能な価値を届けられる企業が一社でも多く増えていく事を私たちSDGsジャーナルでは願っています。
最後に
このSDGs推進フォーラムの最後に片山大臣は日本JCにこのようにエールを送りました。
SDGsの事業を、全国694のJCがそれぞれ3事業やったとすると、年間2000事業を超えます。 それを2、3年続けたら、国連総会に行けるほどの偉業になります。先進国でそれだけやっている団体は他にありません。
それぐらいのことを今日本JCはやろうとしています。そういう大きな夢を描いて取り組んでいって下さい。
「日本で1番のSDGs推進団体」を宣言した日本JCが、「世界で1番のSDGs推進団体」になる日は決して遠くなさそうです。
SDGsジャーナルでは引き続き、青年会議所のSDGs推進情報をお届けしていきます!
日本JCの今後の取り組み
【サマーコンファレンス2019「World SDGs Summit」】
【サマーコンファレンス2019「World SDGs Summit」】
2019年度のサマーコンファレンスは、「World SDGs Summit」をテーマとして、7月20日(土)と21日(日)にパシフィコ横浜にて開催致します。
社会・経済・人材・組織に関する国内のSDGsの取組み事例のみならず、世界の先進事例をフォーラム・セミナー・サミットを通じてご紹介するとともに、VRなど最先端技術を活用して「家族」や「学生」も楽しめるウォークスルー型の体感アトラクションで地球の課題を疑似体験できるブース出展も企画予定です。
まずは始めてみることは大切です。
2019年度のサマーコンファレンスにご参加いただくことで、地球(社会)の課題と向き合い、身近に始められるSDGsを見つけてすぐに行動できる仕掛けを用意し、皆様のご来場を心からお待ちしております。
公益社団法人日本青年会議所
2019年度 経済グループ
サマーコンファレンス運営特別委員会
特別委員長 和田 壮司
takeshi.wada@audinet.co.jp
090-8870-4072