今さら聞けない「バックキャスティング」の使い方

SDGs バックキャスティング




バックキャスティングって何?
どうやって使えばいいの?

From:SDGs支援機構 深井宣光

SDGsの実現には「バックキャスティング」で考えることが必要です。と専門家の間では言われいても実際は、「そもそも聞いたことがない。」「なんとなく聞いたことはあるけれど、よくわからない。」という人の方が多いのではないでしょうか?

ですので、今回の記事では、先日開催された日本青年会議所(以下日本JC)のSDGsプログラムで明らかになった、中小企業のSDGs実践に役立つ、

  • バックキャスティングとは?
  • バックキャスティング最大の誤解
  • 中小企業も今すぐできるバックキャスティングの使い方

をお届けします。

SDGs バックキャスティング

講師 ピーターD.ピーダーセン氏

【今回の取材プログラム概要】
外務省後援 日本JC「SDGsアンバサダー養成プログラム」
「バックキャスティングを学ぶ」より講師:ピーターD.ピーダーセン氏
[株式会社イースクエア](http://www.e-squareinc.com/) 共同創業者
[リーダーシップ・アカデミーTACL](http://www.transagent.co.jp/) 代表
NELIS-次世代リーダーのグローバルネットワーク 共同代表

国際シンポジウムの企画・運営・環境・CSRコンサルティングを経て現職を務める。社会と共に発展できる企業のあり方をテーマに活動を行なっている。「SDGsビジネス戦略」〜企業と社会が共発展を遂げるための指南書日刊工業新聞社)著者。

→外務省後援 日本JC「SDGsアンバサダー養成プログラム」とは?
企業が本業を通じてSDGs推進をすることによって、日本社会をより良い方向へ導く為の「SDGsアンバサダー(大使)」養成研修プログラム。4月25日から4日間に渡って開催。参加者:各地JC代表者48名

SDGsアンバサダーとなった、各地JC代表者はプログラム終了後、各地でSDGsの推進活動を展開中。


バックキャスティングとは?

SDGs バックキャスティング

現在から未来を考えるのではなく、「未来のあるべき姿」から「未来を起点」に解決策を見つける思考法です。

一般的には「未来から現在に逆算」していく方法。とも言われています。

特徴

10年、20年といった長期的な目標実現や、現在の延長線上にはない未来の実現に使われる思考法で、「このままではいけない!」といった根本的な課題解決に有効です。

誰も経験したことのない環境問題の解決等に使用されることで、1970年代から徐々に広まってきました。

実はSDGs自体、バックキャスティングの思考で作られています。

バックキャスティングの例

いつ? 2030年
どんな未来の姿 プラスチックゴミゼロの海
その為に必要なこと ・全てのプラスチック製品の製造をやめ、持続可能な素材に変える
・海のプラスチックゴミを素早く取集し、安全な方法で処分する

 

メリット

具体策や正解がすぐにはわからないものの解決に適している。
飛躍的なアイディア。これまでになかった新しい発想が生まれやすい。
選択肢に制限がなくなる
目先の利害関係を超えたパートナーシップも築くことができる。

デメリット

解決方法に不確実性が高く、実現が困難のものも出てくる。
理想の未来像がしっかりと共有できないと結束することができない。
短期的なアクションには向いていない。

真逆の思考法!?フォーキャスティングとは?

SDGs フォーキャスティング

バックキャスティングが「未来を起点」に考えるのとは対照的な、「現在を起点」に解決策を見つける思考法です。

バックキャスティングとは反対に、短期的で、今目の前のにある課題解決や目標実現に適しています。

特徴

現在のリソースや過去の経験、情報が重要で「現在が起点」であることです。

フォーキャスティングの例

現在の課題 海洋プラスチックゴミ
対策 ペットボトル飲料をしっかりと分別してゴミに出す。
砂浜の清掃活動をする。

もう一つの例

現在の課題 頭痛
対策 頭痛薬を飲む=一時的な解決
※根本的な解決ではない

 

メリット

過去の経験、情報を元に周囲の理解も得られ、結束しやすい。
現在のリソースを活かしやすく、短期的な実行力がある。

デメリット

経験の範囲内で考える為、未経験で不確実な未来の計画に向いていない。
短期的は力を発揮するものの、根本的問題の解決にはならないことがある。
大きな方向性とズレがあっても気づきにくい。
「前もうまくいったから。」と楽観的に考えがち。
選択肢が偏ったり、制限されやすい。

→注意点:決してフォーキャスティングとバックキャスティングは、どちらがいい、悪いというものではありません。

バックキャスティング最大の誤解

SDGs バックキャスティング




ピーター氏の言う、中小企業がバックキャスティングを使う際の最大の誤解とは、、、

 

「未来から逆算しようとしている」ということ。

 

一般的に、バックキャスティングについて解説された書籍やインターネットの情報には

バックキャスティングは未来を起点に逆算するもの

と書かれているものが殆どです。

しかし、ピーター氏はあえてそこに言及し、私たち中小企業がバックキャスティングを活用できていない最大の誤解が「逆算しようとしている」ことだと話されました。

なぜなら、バックキャスティングで実現させようとしている社会の姿は、そもそも現在の延長線上にはない、誰も経験したことのない未来。

正確な逆算は不可能にも関わらず、正解を求めてしまうと、人は足がすくんでしまいうことに…

その結果、時間とコストばかりかかり、結局はバックキャスティングが使えずじまいになってしまう為、

  • 未来から逆算なんてできない
  • 逆算してはいけない

とあえて一般的な解説とは異なる「実践する為の真実」を養成プログラムの受講者に何度も繰り返し伝えられていました。

私たちの正しい「バックキャスティングの使い方」は未来からの逆算ではなく、

常に「未来のあるべき姿」を忘れないこと

その未来に対し必要なアクションを実行し、改善を繰り返して実現を目指すこと。
それがもっとも現実的で確実な使い方であることを、明確にピーター氏は示してくれました。

それでは、ここからはいよいよ「バックキャスティングの使い方」を一緒にみていきましょう。

中小企業も今すぐできるバックキャスティングの使い方

※模造紙と付箋を使って書き出していくことがステップ1〜4共通のポイントです。

ステップ1 未来を起点にあるべき姿を設定する

SDGs バックキャスティング

未来のあるべき姿を書き出します

ステップ1の実践ポイント

✔︎「未来を起点」に現在のリソースや過去を一切気にせずに、理想の未来だけを考えて書き出す。

✔︎いつ、どのような姿かを具体的に書く。


もっとも重要なのがこのステップ1です。

「バックキャスティング最大の誤解」で記載したように、「実際にバックキャスティングを実践する為には一般的に言われている「逆算」という考え方を捨てることが必要です。」と何度も強調して繰り返したピーター氏。

「起点となる未来ビジョンをしっかりと設定したら、その未来ビジョンの姿を忘れないこと」が何よりも重要であることも念を押して話されていました。

ステップ2 課題と可能性の洗い出し

SDGs バックキャスティング

このステップ2では、ステップ1で描いた未来のあるべき姿を実現する為の、

✔︎課題
✔︎可能性

の両方を洗い出していきます。


ステップ2の実践ポイント

✔︎その1
課題の洗い出しは、人が足りない、お金が足りない、スキルが足りない、時間が足りない、、、、等々とにかく実現を遮っている課題を洗い出します。

✔︎その2

  • 自社が持っている可能性
  • 他社が持っている可能性
  • 地域が持っている可能性
  • パートナーシップを組む事で生まれる可能性
  • 等々

「未来のあるべき姿」とのギャップを埋める為に、考えられる可能性を思いつく限り全て洗い出します。

現在の課題を乗り越え、解決に活かせる要素(=強み)を活かしていくことでしか未来に道筋は作れないと話されたピーター氏。このステップ2で初めて「現在」の視点や自社の視点が登場します。

ステップ3 必要なアクションを出し切る

SDGs バックキャスティング

とんでもないアイディアもOK!

ステップ3実践ポイント

✔︎時間軸や実現可能性を気にせずに、必要なアクションをできる限り多数上げていく


ピーター氏は

「とんでもないようなものがないと大きなビジョンは達成できない。」

「何年後にならできそうだとか、できるかできないかなんて一切気にしてはいけない。」

「クリエイティブでとんでもないアイディア、夢のようなな飛んでもないアイディアもどんどん挙げていくことが重要です。」

と話され、漠然としている部分があっても、このステップ3ではとにかくアウトプットすることを強調されていました。

確実であったり、正解のアクションはありません。どんどんアウトプットしていきましょう。

ステップ4 時間軸に配置する

SDGs バックキャスティング

時間軸に配置します

ステップ4の実践ポイント

✔︎ステップ1の「未来のあるべき姿」の実現に向けて、ステップ3で書き出したアクション項目を時間軸に配置する。


実行する順に時間軸に配置してみることで、不足するアクションが見つかった時は、不足を補うアクション を足していきましょう。

イメージ図のようにアクションプランを時間軸に配置したら、バックキャスティングの完成です。

完成したバックキャスティングマップを道しるべに、一つ一つのアクションを実行していきましょう!

まとめ

中小企業がSDGsを実践する為の「バックキャスティングの使い方」いかがでしたでしょうか?

これまでとは違う思考法を使うことで、これまでにはなかった発想によって解決方法が生まれたり、パートナーシップを組み合えるようになることをプログラムに参加した各地JCの参加者の方達も実感していました。

最大のポイントは逆算ではなく「未来のあるべき姿」を忘れずに、トライ&エラーを繰り返してSDGsの実現を目指すこと

あなたのビジネスだからこそ出来るSDGs実現の為に!
是非、あなたもバックキャスティングを使ってみて下さい。

PS

SDGsアンバサダーとなった各地JC代表者48名の「バックキャスティング実践事例」等も今後の記事でお届けしていく予定です。

日本JCの今後の取り組み

合言葉は「パートナーシップが世界を変える!」

【サマーコンファレンス2019「World SDGs Summit」】

開催期間:7月20日(土)、21日(日)
開催場所:パシフィコ横浜

サマーコンファレンス2019の詳細はこちら

SDGs 目標17 パートナーシップ

=以下、日本青年会議所 挨拶文引用=

公益社団法人日本青年会議所は、誰もが挑戦できる幸せな国日本の創造を目指して、SDGsを軸とした数多くの政策を打ち出し、全国各地で社会実験や提言をして参りました。

その成果を全国の青年会議所会員と一般市民の皆様に広く発信し、日本全国で行われる運動へと昇華していくために、サマーコンファレンスを横浜の地で開催します。

本年で26回目を迎えるサマーコンファレンスのテーマは「World SDGs Summit」と致しました。

日本JCは多くの団体・企業とパートナーシップを築き、SDGsを推進してまいりました。サマーコンファレンス2019では、参加者の皆様が、日本JCをハブとして多くのパートナーシップを構築いただくことができます。皆様自身がパートナーと共にSDGsに取り組んでいただくことで、持続可能な社会が実現すると考えております。

また、2030年以降の社会の主役である学生の皆様には、自治体・企業・団体のみならず、国内外の若手社会起業家のSDGsへの取り組みを知ることで、持続可能な社会の実現に向けた地球の課題解決方法を認識し、今からすぐにできること、そして、将来自分が取り組みたいことを明確にしていただきたいと考えております。

さらに、本年は、家族で楽しめるというこだわりの設えを随所にご用意しております。
ご参加いただいた親御様には教育プログラムを通し2030年以降を担う人材を育てる当事者として、今から始められる教育方法知っていただき、お子様にはVRなどの最新技術を用いたアトラクションで楽しみながら自然にSDGsの世界に引き込まれることで、家族で身近に始められるSDGsをお持ち帰りいただける機会になるものと確信しております。

結びとなりますが、サマーコンファレンス2019の開催にあたり共催の一般社団法人 横浜青年会議所並びに横浜市をはじめとする多くの関係者の皆様に、ご支援とご協力を賜りましたことに感謝を申し上げます。
共に心躍る未来へ、やりましょう!

公益社団法人日本青年会議所
第68代会頭
鎌田 長明

【サマーコンファレンス2019「World SDGs Summit」】

開催期間:7月20日(土)、21日(日)
開催場所:パシフィコ横浜

サマーコンファレンス2019の詳細はこちら

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