目標8「働きがいも経済成長も」とは?
この目標8は、「包摂的かつ持続可能な経済成⻑及びすべての人々の完 全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用 (ディーセント・ワーク)を促進する」のテーマのもと、12個のターゲットから構成されています。
ディーセントワークとは?
公正な 所得、安心できる職場と家族の社 会保障、自己啓発と社会的統合 のよりよい見通しを提供できる生 産的な雇用を誰もが得られる機 会を意味します。(引用:国連広報170822 Why it Matters Goal 8 Economic Growth(EJ))
目標8を構成する12個のターゲット
8.1 | 各国の状況に応じて、一人当たり経済成⻑率を持続させる。特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成⻑率を保つ。 |
8.2 | 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。 |
8.3 | 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成⻑を奨励する。 |
8.4 | 2030年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組みに従い、経済成⻑と環境悪化の分断を図る。 |
8.5 | 2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 |
8.6 | 2020年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。 |
8.7 | 強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。 |
8.8 | 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 |
8.9 | 2030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。 |
8.10 | 国内の金融機関の能力を強化し、すべての人々の銀行取引、保険及び金融サービスへのアクセスを促進・拡大する。 |
8.a | 後発開発途上国への貿易関連技術支援のための拡大統合フレムワーク(EIF)などを通じた支援を含む、開発途上国、特に後発開発途上国に対する貿易のための援助を拡大する。 |
8.b | 2020年までに、若年雇用のための世界的戦略及び国際労働機関(ILO)の仕事に関する世界協定の実施を展開・運用化する。 |
なぜ、目標8「働きがいも成長も」が必要なのか?
それは、世界の失業率が1990年代よりは下回っているものの、年間340万人以上の失業者を生み出し続けているからです。
その総数は今や2億人を超えて増え続けています。
(参照:国際労働機関(ILO)https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/—asia/—ro-bangkok/—ilo-tokyo/documents/publication/wcms_546529.pdf)
増える労働者と足りない雇用
また、こちらの図は生産年齢人口(15歳〜64歳)の推移予測を示したものですが、2000年以降特にアフリカでは人口の増加に対する、雇用が足りていません。
(引用:内閣府 http://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh11-01/pdf/s1-11-1-3.pdf)
その結果、増え続ける生産年齢人口の増加を満たすためには2016年時点から2030年までに毎年約3000万件の雇用創出が必要とされていて、その数は合計世界全体で4億 7,000 万件にもなります。
雇用が足りないとどうなるの?
雇用が足りなくなることにより、SDGs目標1「貧困をなくそう」の実現が困難になり、貧困から飢餓への負の連鎖の加速を引き起こしていくことになってしまいます。
(SDGs目標1「貧困をなくそう」の詳しい解説はこちら→「わかる!17の目標【目標1 貧困をなくそう】」
(SDGs目標2「飢餓をゼロに」の詳しい解説はこちら→「わかる!17の目標【目標2 飢餓をゼロに】」
また貧困による社会的不満や不安は移住、移民を引き起こします。
(引用:内閣府http://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh11-01/pdf/s1-11-1-3.pdf)
この結果、移住、移民先の国では労働力の確保や経済成長に寄与する側面もありますが、現地での課題解決力の欠如にもつながってしまい、SDGsの掲げる様々な目標達成実現に大きな影響を及ぼしていくことになります。
持続可能な開発目標達成のために、持続可能で働きがいある雇用が今求められています。
労働市場の抱える問題
世界的なジェンダー格差問題
国際労働機関(ILO)では以下のようにジェンダー格差の問題を指摘しており、ジェンダー格差の問題が目標8の「働きがい」の解決にも密接に関わっていることがよくわかります。
特に懸念すべき労働市場の機会に関するジェンダー格差は、 数多くの分野にまたがって根強く残っている。例えば北アフリカでは、労働力人口におけ る女性が 2017 年に失業する確率が男性の 2 倍に上る。
アラブ諸国の女性にとって、この格 差はさらに深刻であり、失業する確率は男性の 2 倍以上、男女間の失業率格差も 12 ポイン トを超えている。アフリカ、アジア太平洋、アラブ諸国全体で、脆弱な雇用形態の比率は 女性のほうが一貫して高くなっている。
例えば南アジアでは、2016 年の脆弱雇用率が男性 の 72%強に対し、女性は 82%近くに上っている。 労働市場におけるジェンダー格差は、報酬の差にまで及んでいる。
(参照:国際労働機関(ILO)https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/—asia/—ro-bangkok/—ilo-tokyo/documents/publication/wcms_546529.pdf)※太字、蛍光線はSDGsジャーナル筆者にて。
このように「女性」というジェンダー格差によって働きがいのある仕事ができない人たちが沢山います。
SDGs目標5「ジェンダー格差をなくそう」の詳細はこちら
女性だけではない!?ジェンダー格差問題
またここで取り上げたジェンダー格差は「女性」という性別に絞ったものだけをお伝えしましたが、ジェンダー格差は「男性」だから、「女性」だからといった場面以外でも起きています。その一例が「LGBT」です。
「働きがい」に関わる「女性」だけではないジェンダー格差問題についてはこちらのSDGs目標16も合わせてご覧ください。
PS
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